清酒はわが国において長期にわたって接続しつづけてきたが、第二次世界大戦後、ビール、焼酎、ワインなど他の酒類産業が発展し、清酒市場は相対的にも絶対的にも縮小をよぎなくされた。縮小化された清酒市場において、清酒製造業の競争も強まり、二極分化が進行しつつある。大規模メーカーでは装置産業化、大量生産化が志向され、自社操業度を高め、おけ取引からも撤退している。中小規模メーカーでは、鋳造好適米の使用比率を高め、また、純米酒、吟釀酒など品質志向を強め、高附加価値化を図っている。 こうした傾向は、実態分析を実施した広島県西条地区の酒造業にも見られた。大規模メーカーに属するA酒造においては、旧来の杜氏組織から脱却し、最新式の酒造設備を開発・整備し、コンピュータ制御による一貫作業体系を完成させ、年間生産体制を整えている。中小規模メーカーであるE酒造では純米酒へのこだわりが強く、農業生産者グループと契約し、有機・天日干した原料米を用いた清酒を製造している。バブル形材の崩壊、低経済成長下での酒類市場をめぐる競争が強まる中で、こうした二極分化の方向は一層促進されるものといえよう。
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