日本の高齢化率は従来「西高東低」の傾向を示していたが、しだいに均等化しつつある。代わりに、大都市圏と小規模市町村で高齢化が進むという形の地域分布に変わってきている。特に、後者の高齢化は急速である。しかも、過疎地ほどそのピークは早く、地域社会の早期崩壊が予測されるほどの危機的状況に至っている。 そうした状況下にある農村高齢者の生活問題は、経済的・社会的・身体的自立の観点から総合的に捉えないと解明できない。本研究ではその一歩として、主に鳥取県東伯町を対象にアンケート調査と聞き取り調査を実施し、「高齢者の増加による問題」ではなく「高齢者自身の問題」を明らかにすることに努めた。 その結果わかった主要な点は以下の通りである。 第1に農村高齢者の生活問題は家族形態によって異なっている。単身世帯及び夫婦世帯の場合には経済的自立が重要である。年金の不十分さのゆえに、働かざるをえない。 第2に、高齢化問題一般に関する意識は、40歳代以下と50歳代以上で明瞭な違いがある。特に、「いえ」の「扶養共同体」的性格の評価や高齢者介護の担い手について、そうした傾向が認められる。 第3に、「元気な高齢者」を対象とするケアハウスであっても、地元ではなお入居に対する忌避感が根強い。世間体や施設への無理解などが、その要因である。 第4に、ケアハウス入所者は、労働や体を動かす機会を強く求めている。調査地では「JAとうはく」がケアハウスを設置したため、農園や温室も整えられている。ここに、農協主導型の高齢者福祉の強みがある。
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