研究概要 |
1.永瀬ダム湖における観測結果:(1)表面に表れる対流セルの大きさは円形は少なく,楕円形や,温水塊としか表現できないような不定型が多い。(2)対流セルの大きさは等価直径(同じ大きさの円形に換算したもの)が15cm程度のものから80〜90cmのものまである。(3)対流セルの発生・消滅の1サイクルは,ほぼ一定の温度分布の水面上に小さな対流セルが一様に分布発生し,これらがしだいに大きな対流セルに集合発達してゆく。次いで,大きなセルがしだいに小さなセルに分解し,再び一定温度分布に近ずく。1サイクルの時間は5〜20分程度と大きな幅がある。 2.水槽実験:直径20cmの透明ポリエステル製水槽に1〜30cmの深さに水を入れて使用した。(1)全水深において幅1〜1.5cm程度の帯状の対流セルが並ぶが,その形状と並び方は一定でない。(2)(1)の他に等価直径7mm程度の多数の対流セルが成長して等価直径50mm程度の対流セルになった。(3)湧昇流が突然噴き上がりまた減衰する現象が見られた。(4)下面から加熱しても上面から冷却しても同じような熱映像が得られた。(5)水温センサーを水深1cm間隔で10本並べて対流現象を測定しようとしたが,センサーの精度のためか有意なデータが得られなかった。 3.鉛直2次元対流の数値解析:Navier-Stokes方程式,連続式及びエネルギー方程式を差分化し,Rayleigh数1000〜10^6の範囲で,縦横比1:10の薄い平板間に水を満たし下面から加熱した場合について定常対流を計算した。Ra=1000程度で対流が発生,Ra=5000(12セル)で規則的対流。Raがさらに大きくなるにつれて対流は不規則になり,Ra=10^5(16セル)付近から乱流に似た状態を示した。これらの計算は平板に挟まれた部分に対するものであるが,今後は境界条件を変え,3次元の場合まで拡張するべく検討中である。
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