八郎潟中央千拓地(D14圃場)の低湿重粘土水田内に設けた不耕起田と耕起・代かき田(慣行田)の試験圃場において実施した調査・実験は順調に進展し、次のような知見を得ることができた。 1.試験田の地温 深度5cm、10cm、20cm、30cmの地温は、年間を通じ不耕起田が慣行田より高めに推移することがわかった。とくに田植え直後から活着期の地温が高めに推移したことは、水稲の初期生育の確保のうえで有利であった。 2.土層の酸化還元電位(Eh) 深度3.5、10、17.5、25、40cmの酸化還元電位(Eh)は、潅漑期のEhは不耕起田が慣行田に比べて高い数値で推移し、不耕起田の土層は酸化が進行していることがわかった。 3.降下浸透水中の鉄(Fe)、マンガン(Mn)濃度 降下浸透水中のFe濃度は、作土層の上部で高く、下層では低下する傾向がみられた。とくに不耕起田に比べて慣行田の値が極めて大きい値となった。Mn濃度分布についてもFe濃度と同様な傾向を示した。 4.電気伝導度(EC) 降下浸透水の電気伝導度(EC)は深度3.5cmでは慣行田のECの不耕起田に比べて大きい値を示した。深度40cmでは両試験田共に下層のECが上昇する傾向にある。 5.田面水および小排水路排水のSS濃度 田植え直後の田面水のSS濃度は不耕起田が20.8mg/l、慣行田が78.4mg/lであった。また、小排水路排水のSS濃度は不耕起田が28.8mg/lに対し、慣行田では159.2mg/lと高い値を示した。 6.蒸発散浸透量(減水深) 水田1筆の蒸発散浸透量は、不耕起田は12.6mm/dであるのに対して、慣行田は5.7mm/dであった。
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