研究概要 |
平成7年度は米粒周囲の空気条件を任意に制御しうる恒温・恒湿器(科研費で購入)の内部にマイクロスコープのCCDカメラを置き,玄米粒の内部に発生する胴割れの挙動をビデオカセットに収録して,再生により胴割れ発生時の詳細な挙動を観察した。器内の温・湿度は10,20,30℃と80,85,90,95%を組み合わせて条件とした。胴割れの発生は水分17.3%で全くなく,15.3%で30℃-95%RHにおいて弱く,過乾米の12.7%で30℃-95%RHにおいて強く,また超過乾米の10.7%で10,20,30のいずれの温度でも85%RH以上において強かった。過乾米の胴割れは1〜2時間内で中心部に突発的に発生し,拡大した。 平成8年度も同じ恒温・恒湿器内で,胴割れの要因を探索した。加熱温度下の放湿(乾燥)については,40℃を起すと胴割れを発生し,また近飽和湿度下の吸湿についは,水分20.2%で胴割れが発生せず,それ以下で発生率が高まり,過乾燥の12.2%では全て激烈に発生した。温度10,20,30,40℃について吸・放湿等温線を作成し,これを基に含水率と相対湿度が平衡状態にある玄米へ温度10,20,30,40℃と相対湿度40〜95%の組み合わせ条件を与えて,1吸・放湿による膨張・収縮と胴割れの関係,2吸・放湿速度と胴割れの関係(3)吸湿ポテンシャルと胴割れの関係を検討した。吸・放湿により全方向に収縮あるいは膨張し,弾性体とは長軸・短軸の伸縮比やひずみ比を異にした。よって,材料力学的な考察はできず,水蒸気圧差によってなすべきと考えられた。吸・放湿は水蒸気圧差によって起り,その推進力である吸湿ポテンシャルも相対湿度によるものなので,吸湿ポテンシャルが高まると胴割率は上昇した。水分20%を超えると吸湿ポテンシャルは0に近づき,胴割れの発生はなくなった。時間当りの放湿仕事率は水分が高くなるほど小さく,温度の高いほど大きくなった。
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