研究概要 |
我が国の加工用さくらんば(オウトウ)の生産量は年間約4,000tであり,そのすべてが手で収穫されている。収穫労働力が年々減少していることから機械収穫が切望されている。 1995年度は,前年度の結果(梅用シェ-カを試供しオウトウを収穫した結果,ストロークが小さいため,果梗抜け果が多く発生した。)を踏まえシェ-カのストロークを大きく(8cm)改造した結果,落果率,果梗付き果率が共に高くなった。着色加工した果実は損傷は殆どなく製品として全く問題がないことが明らかになった。 1996年度はシェ-カの作業性の向上のため,フックをクランプに改造し,大きなストロークを発生する振動部をブームの手許に移動した。その結果,一人の作業者がクランプを枝に掛け締め付け振動する作業が一貫して行えることになった。 ほ場試験では,(1)機械収穫適期は果色が黄色から赤みかかった頃であり,完熟では果梗抜け果が多くなる。(2)垂れた枝では振動が伝わりにくい。(3)樹皮損傷はなかった。が明らかになった。 シェ-カの振動は枝を介して結果枝(S)-果梗(S)-果実(F)系に伝わり果実が脱離する。果実の脱離特性を振動試験と引っ張り試験で調べた。振動試験では,(1)結果枝のストロークが6から8cmで果梗付き果率が高く,2cmでは極めて低くなる(葉なし単粒)。(2)葉付きで1結果枝当たりの果実数が多くなると落下率,果梗付き果率が共に低くなる。ことが分かった。引っ張り試験では,(1)糖度が低い(果実質量が小さい)とSS脱離力はSF脱離力より小さい。糖度が高いと後者は前者の1/3である。(2)果実を果梗と逆方向に引っ張ると脱離力は極めて小さい。ことが分かった。 今後、果樹の整枝・剪定法を確立し着果状態を調整すれば,小枝を対象とした加工用オウトウの振動収穫は近い将来実用化されると思われる。
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