研究概要 |
本研究は水産分野等への応用を念頭に置いたユニークな水中マニピュレータ(これを漁獲ロボットと呼ぶ)を開発することを大目標としている。当該研究期間における研究成果は,そのための基礎的研究として行った水中移動物体の運動制御手法に関するものである。とくに水中移動物体のダイナミクスにおける強い非線形性に着目し,この非線形特性を考慮した制御系の設計・解析を行うためのシステマティックな手法について検討した。 制御系設計の手法として非線形状態フィードバックによる厳密な線形化および線形ロバスト補償機を組み合わせる方法を適用した。実際の物理システムをモデル化する際には,不確かなダイナミクスやパラメータ誤差等,何等かの形で必ずモデル化誤差が生じる。それゆえ,これらの誤差の存在下では厳密に線形化することはできない。また,状態を観測する際の誤差にも影響を受けるはずである。筆者らはこの点を設計段階で陽に考慮し,このように不完全に線形化されたシステムを不確かさの存在する線形システムとして捉え,線形ロバスト制御の問題として制御系設計・解析する方法を検討した。 今回,線形ロバスト制御方法として構造化変動に対するスケーリング付H∞制御を用いた。この枠組みにおいて,筆者らは新たに 1)パラメータ変動としての観測誤差の陽な表現 2)変動の無相関性を考慮した構造化変動の低次元化 3)実変動の符号を考慮した非線形フィードバックゲインの設定 を考慮した設計手法を各々提案した。多項式表現による非線形項を含んだ簡単な1入力1出力系に対して数値実験を行い,これら設計手法の有効性を確認した。
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