研究概要 |
本研究により次のことがあきらかになった.(1)繊毛虫に付随するメタン生成細菌の生理的性質・存在数:繊毛虫分画に存在するメタン菌数は,飼料の給餌によって変動し,給餌直後から増加し,数時間後には元の水準に戻ることが明らかになった.このようにすばやい増減は繊毛虫に付着するメタン菌の存在を強く示唆した.繊毛虫に付随するメタン菌の性質を調べたところ,繊毛虫に付随するメタン菌は,遊離状態で生活するものとは好塩性・アンモニア耐性が異なることが示唆された.(2)繊毛虫に付随するメタン生成細菌のメタン生成活性:繊毛虫に付随するメタン生成細菌の、メタン生成量が,繊毛虫の属に依存することを明らかにした.すなわち,繊毛虫1虫体当たりの見かけのメタン生成を測定したところ,Isotricha属が最も高い生成活性を示したが,Polyplastron属,Epidinium属では著しく低い値となった.(3)メタン生成細菌と繊毛虫の関係:メタン生成細菌と繊毛虫の関係は,以上のように種間水素転移を核とした共生とみなすことができるが,この関係が他の水素利用細菌,硫酸還元細菌および酢酸生成菌,によって一部置き換えることが可能であることをあきらかにした.(4)繊毛虫から調整したDNAおよび繊毛虫から単離したメタン細菌の16SrDNA:繊毛虫から調整したDNAおよび繊毛虫から単離したメタン細菌のゲノムDNAは,通常用いられている16SrDNAをターゲットとした古細菌特異的プライマーでは全くPCR増幅しないことを明らかにした.また単離菌の好塩性・アンモニア耐性が繊毛虫に付随するメタン菌を中心とするメタン菌群の示したパターンと一致しないことが明らかになった.すなわち,付着メタン菌と内部に共生しているメタン菌が,これらの性質上異なっており通常の単離方法では単離が困難なことが示唆された.
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