研究概要 |
1.豚腸上皮間リンパ球(iIEL)の分離はマウスでの方法に準じて行った。すなわち,回腸口から回腸側に約1mから2mの部分を採取し,洗浄した後パイエル板を除去し,細切してiIEL分離液(5%Glucose,5mM EDTA加PBS)を加え,37℃で15分間振盪し,ついで洗浄・細胞の回収を繰り返し,PBSに再浮遊させ,グラスウ-ルカラムにかけて未吸着細胞を回収した。その結果,10ml容積の腸断片から約5x10^7個の生細胞が得られた。次に,腸断片から粘膜固有層リンパ球(LPL)を分離するためD,分離液(0.015%コラゲナーゼ2%FCS加PBS)中で,37℃,75分間振盪し,200メッシュ上で濾過した後,腸断片をすりつぶし,PBSで洗浄回収した。濾過した細胞浮遊液はグラスウ-ルカラムにかけ,比重遠心法によりリンパ球を回収した。その結果,10ml湿潤容積の腸断片から約2x10_7個の細胞が得られた。 2.iIELおよびLPLについてCD4,CD8,Surface Ig(SIg)の陽性細胞率を脾臓リンパ球と比較した。豚脾臓リンパ球ではCD4,CD8,SIgの陽性率はそれぞれ,13.7%,19.5%,31.2%であった。一方,iIEL,LPLともにSIg陽性細胞はほとんど観察されなかった。CD4の特異蛍光は弱く,陽性細胞率はiIELで10.3%,LPLで14.7%であった。CD8の特異蛍光はCD4と比較して強く、その陽性細胞率はiTELで52.3%,LPLでは26.6%であり,iIELで極めて高い陽性率を示した。 以上のように,豚iIELおよびLPLは分解可能であり,また材料も豊富に採取できることから,比較医学上からもその利用が有用と考えられた。また,サプレッサー/細胞障害性T細胞とされるCD8陽性細胞率がiIELで極めて高いことは,経口免疫寛容などの点から極めて興味深い所見である。
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