研究概要 |
昨年までは専ら北海道江別市の野幌原始林において野鼠を採取し、血清疫学的な調査を行った。その結果、抗体保有率は最も重要な日本紅斑熱の病原巣と考えられるアカネズミで高かったがエゾヤチネズミでも抗体を保有することが明らかとなった。しかし、ヒメネズミでは抗体保有は認められなかった。これらの成績についてはJpn.J.Med Sci.Biol.,49,63-68,1996.に報告した。しかし、リケッチアの分離は不成功であったことから本年度には青森県十和田市付近特に奥入瀬川付近で野鼠の捕獲を行い、主としてアカネズミの材料を採取した。この結果、この地域ではアカネズミにおいて野幌より高い抗体保有率と抗体価が検出され、少なくとも北日本に紅斑熱群リケッチアないし抗原性の類似したものが広く分布することが確かめられた。現在この採集材料よりのリケッチアの分離を試みているが成功していない。継代によりある程度の抗原性の維持が認められるが紅斑熱群リケッチアの遺伝子の検出は成功せず、この問題がより複雑なものであることが確かめられた。 昨年のタイにおける日本紅斑熱群リケッチアについての調査はMicrobiol.Immunol.,40,895-898,1996.に発表した。続いて未だ紅斑熱群リケッチアの存在が報告されていない南部アフリカ,ザンビア国で1991年に3カ所の地域より採集したヒト血清を入手し、発疹熱とともに抗体検査を行ったところ牧畜の盛んな2カ所で抗体保有率が有意に高いことが認められた。現在質問票に基づき生活との関連を解析している。
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