研究概要 |
コレステロール添加(0.2%〜1%)飼料により長期飼育したスナネズミにおける肝病変について病理組織学的に観察し,特に肝線維化と関連の深いとされる伊東細胞の変化を観察した。0.2%以上添加群では,投与開始後から血清コレステロール値の顕著な上昇がみられ,0.5%以上添加群では最高約1,000mg/dlに達した。コレステロール投与群の肝臓は灰白色を呈して腫大し,多結節状を呈した。病理組織学的には,早期からコレステロール蓄積を伴う肝細胞の腫大,類洞の狭窄を示し,長期投与によりzone3肝細胞の脂肪変性が強まり,限局性脂肪壊死が観察された.この領域では,α-SMA陽性の伊東細胞の集族,線維成分による網工形成がみられ,投与継続とともに伊東細胞の増殖とともに好銀・コラーゲン線維は増生・伸長し,Glisson鞘周囲から伸長してきた線維と接合した.0.2%群では,再生結節はみられなかったが,0.5〜1%群ではzone1および2に異型肝細胞増殖巣が発現して結節性に増性し,類洞の虚脱とともに再生結節間の線維成分は次第に密度を増し,再生結節を取り巻く薄い間質帯が形成されて肝硬変像を示した。このような肝硬変形成過程において,強い脂肪変性領域では,伊東細胞のα-SMA陽性化,樹状突起の伸長,周囲Disse腔内に細網あるいは膠原線維の放出がみられた。一部では伊東細胞の集族・増殖巣も散見されたが,その数は線維の増加・器質化に伴い減少した。以上のように,高コレステロール食投与スナネズミでは,高コレステロール血症とともに,早期に脂肪肝を呈し,肝細胞が強度の脂肪変性あるいは脂肪壊死を示す領域において,α-SMA陽性伊東細胞により細網・膠原線維が合成・放出され,長期投与により肝線維症あるいは肝硬変が形成された。
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