研究概要 |
過肥乳牛が陥りやすい脂質代謝異常性疾患として脂肪肝およびケトーシスを挙げ.,その病態発生とCarnitine Palmitoyltransferase(CPT)活性との関連を検討した. CPTはミトコンドリア膜に存在し,脂肪酸のミトコンドリア内への取り込みに関与する酵素である.実験に先立ち.,蛍光法による牛における肝活性の測定法に関する検討を行い.,同時再現性試験におけるCV値8.9%,L-Carnitineに関するKm値0.56±0.10mmol/L(mean±SD),palmitoyl-CoAに関するKm値9.6±2.2オmol/Lを得た.更に健康牛39頭の平均CPT活性値を求め(35.12±2.11μmol CoASH/min/gprotein,mean±SEM),品種および性別による相違が認められないことを確認した. 人為的発症ケトーシスに関する実験によってエネルギー状態によるCPT活性値の変化を検討した.6頭の乾乳牛を約3カ月,高エネルギー食(TDNで200〜250%)で飼育し過肥状態にした後,27日間の絶食を行った.約3カ月の高エネルギー飼育で全頭に平均約10%の体重増加を認め,Body Condition Score(BCS)も3.08±0.34(mean±SEM)から3.85±0.37に増加した.絶食開始後.12日以内に全頭にケトン尿,体重およびBCSの減少を認め,ケトーシス状態に陥った. 高エネルギー飼育前,過肥状態,絶食中(13日目と27日目)に肝生検を実施した.血液サンプルは肝生検の前日に採材した.絶食中の結成遊離脂肪酸は絶食12日目で1847±205(μEq/L,mean±SEM),絶食26日目1521±256と絶食前(220±59および38±4)に比較し増加した.CPT活性は高エネルギー飼育前,過肥状態,絶食13日目および27日目で10.60±2.53(nmol CoASH release/min/gprotein,mean±SEM),18.81±3.26,9.49±2.96および6.65±1.31であった.高エネルギー食給餌前に比較して過肥状態では有意なCPT活性の増加がみられ,過肥状態と比較して絶食後13日目および27日目ではCPT活性の有意な低下がみられた.低エネルギー状態におけるCPT活性の増加がラットにおいて報告されている.今回の実験ではこれらの知見とは異なる結果となった.
|