研究概要 |
イヌの血清ChEアイソザイムバンドおよび血清、血液、赤血球ChE活性に対する各有機リン剤、PS型(Fenthion,Isoxathion)、PO型(Dichlorvos,Propaphos)の影響を検討した。 材料と方法:ビ-グル犬(成犬、雌雄)16頭を4頭ずつ4群に分けた。各々の有機リン剤は5%アラビアゴム溶液に懸濁し、Fenthion 220mg/kg(I群),Isoxathion 75mg/kg(II群),Dichlorvos 120mg/kg(III群),Propaphos 90mg/kg(IV群)の用量を1回経口投与した。採血は投与直後,1,3,6,12,24,48,72時間目,5日,10日,20日および30日目に行い測定試料とした。血清ChEアイソザイムの測定はPAG電気泳動後、染色を行いゲル板を乾燥させた後、スキャナーを用いてコンピュータに取込みバンドの測定を行った。また、同時に赤血球および血清ChE活性値をエルマン法に準じて測定した。 結果:臨床徴候はI群、II群とも実験期間を通じて著変を認めず、一方、III群、IV群では投与直後より痙攣等が出現し、III群は4例中2例が30分以内に、また、IV群は4例が1時間30分以内に斃死した。赤血球ChE活性値はいずれの群も投与直後から1時間目にかけて抑制が認められ、全例が斃死したIV群を除く3群では3〜6時間にほぼ元の値にまで回復した。一方、血清ChE活性値はIとII群が投与後1〜12時間目にかけて著しく抑制され、24時間目以降回復傾向を示し30日を経過してほぼ元の値に回復するのに対し、III群は投与直後に抑制され1時間目以降回復傾向を示し24時間目にはほぼ回復していた。また、血清ChEアイソザイムは、投与直後から1時間目にかけて、IV群においてバンド4の阻害が認められ、I群とII群では12時間目にバンド4および5の阻害を認めた。
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