研究概要 |
銀杏種子,大豆種子,トマト果実より精製或いは部分精製したendo-b-GlcNAc-aseは,いずれも至適pHを6〜7の間に有し,分子量はゲルろ過により〜64kDaであった。昨年度精製の完了したエンドウ種子由来のendo-β-GlcNAc-aseの分子量が42kDaであったことから,エンドウ種子中にも64kDaの分子種が存在する可能性が考えられる。植物細胞由来のendo-β-GlcNAc-aseはいずれも,α1-2マンノース残基を有するオリゴマンノース型糖鎖のGlcNAcb1-4GlcNAc間を効率良く加水分解したが,α1-2マンノース残基を有さないオリゴマンノース型糖鎖に対する加水分解速度は30〜50%程度であった。また,いずれの植物endo-β-GlcNAc-aseもキシロース及びフコース含有の複合型糖鎖には活性を示さなかった。この結果は植物細胞由来のendo-β-GlcNAc-aseの活性発現において,酵素サブサイトとal-2マンノース残基との相互作用が加水分解反応速度を制御している可能性を示唆している。一方,大豆種子由来のPNGaseは分子量約94kDa,至適pHは5〜6であった。オリゴマンノース型糖鎖,キシロース及びフコース含有の複合型糖鎖を有する糖ペプチドいずれにも作用し,糖鎖をペプチド鎖からアミダーゼ活性により遊離した。オリゴマンノース型糖鎖含有ペプチドを基質として用い,endo-β-GlcNAc-aseとPNGaseを共に含む粗酵素液(大豆種子)を作用させたところ,GlcNAc-peptideのみが検出されたことより,植物細胞中ではオリゴマンノース型糖鎖の遊離にはendo-β-GlcNAc-aseが関与していることが考えられた。更に,エンドウ胚軸,タケノコ中に存在する遊離アスパラギン結合型糖鎖を精製後それらの構造解析を行ったところ,endo-β-GlcNAc-aseにより遊離したと考えられる数種のオリゴマンノース型糖鎖とPNGaseにより遊離したと考えられる複合型糖鎖が確認された。
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