研究概要 |
1、ラット脳室上衣細胞の線毛に存在するG蛋白質 細胞膜の受容体からの情報を細胞内に伝達するG蛋白質にはGo,Gi,Gsなどが知られているが、GoやGiは百日咳毒素に感受性を持つことが知られている。これまでの報告によると、ラットの脳室上衣細胞の線毛にはGoが存在するとされてきた(Peraldi et al., 1989)。しかし、本研究により、ラット脳室上衣細胞の線毛には、GoではなくGi2が存在する事が明らかになった。さらにGi2は卵管上皮や気管上皮の線毛にも存在する一方で、精管上皮の不動毛には存在しない事が免疫組織化学的に証明された。さらに、脳室上衣細胞の線毛におけるGi2の局在を免疫電顕的に検索すると、Gi2は線毛の細胞膜にのみあり、線毛の中心部には存在しなかった。培養した気管に百日咳菌を加えると上皮の線毛運動が停止したという報告もあり(Collier et al., 1977)、今回の結果はGi2が脳室・気管・卵管の上皮における線毛運動に関する情報伝達に関与している可能性を示唆すると考えられる。 2、嗅覚系におけるHeme oxygenase-2 (HO-2)の局在 嗅細胞に“におい"物質を加えるとcGMPレベルが上昇するが、HO-2阻害剤の存在下ではcGMPの上昇は認められない(Verma et al., 1993)。この事は、HO-2がにおいの情報伝達になんらかの役割を果している事を示している。そこで本研究では、HO-2のペプチドに対する抗体を作成して、ラット嗅覚系におけるHO-2の局在を免疫組織化学的に検索した。その結果、HO-2は嗅粘膜の嗅細胞と副嗅球系の鋤鼻器官の感覚細胞をはじめ嗅神経線維、鋤鼻神経、嗅球の僧帽細胞や糸球体周囲の神経細胞など嗅覚系の細胞に広く分布しており、においの情報伝達に重要な役割を果していることが示唆された。
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