研究概要 |
本研究は抗コネクシン32抗体(HAM8)を既に我々が作製し報告していること,またある種の末梢性神経疾患(脱髄性疾患)では末梢神経において正常では認められるコネクシン(Cx)32が消失していることが明らかにされ,Cxと疾患との関連性が注目されはじめたことを踏まえ,ラットを実験動物に用い,種々に変性した神経を抗Cx32単クローン性抗体・HAM8を用いて染色し,疾患とCx32の発現状況との関係を明らかにすると同時にヒト末梢神経についても同様に解析することを目的とした. まず最初に正常ラット末梢神経におけるCx32の発現を調べた.その結果,神経は通常の染色方法ではCx32の存在を明らかに出来ないが,我々は染色方法に工夫を加えることにより,HAM8抗原(Cx32)が発現されていることをある程度明らかにした.つまり,神経組織の凍結切片を用いて間接蛍光抗体法で染色すると陽性部位が存在するのは明かであるが,その局在は不明である.一方,神経を細い針先でほぐし,種々の処理後同様に間接蛍抗体法で染色すると陽性部位はランヴィエ絞輪の近位側と遠位側の両髄鞘周辺に比較的限局して強い蛍光が認められた.しかし,これを明かにするには共焦点レーザー顕微鏡を用いて調べる必要があると考えられた.また,末梢神経を間接蛍光抗体染色前にどのような処理を施せば抗原が保たれ,かつHAM8抗体が十分反応し局在が明らかにできるか,今後も検討する予定である.この問(1)放射線照射ラットの坐骨神経,(2)全身性移植片対宿主反応(GVHR)を起こさせたラットの末梢神経,(3)坐骨神経を切断し,ワーラー変性に陥った神経,(4)ラットの坐骨神経を切断し,直後に再縫合した後の縫合部近位端および遠位端の神経,などの試料作製技術の確立.(5)ヒト神経筋疾患(炎症性ニューロパチー,糖尿病性ニューロパチー,遺伝性ニューロパチー,アミロイドーシスなど)患者から腓腹神経などの収拾ができ,備品として購入したフリーザ-や液化窒素凍結保存器に保管している.
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