研究概要 |
本研究においては、生体内に産生された高濃度のサイトカインが肝に及ぼす影響を組織学的に検索した。 1.T細胞活性化物質投与実験 T細胞を直接活性化してサイトカイン産生を促すコンカナバリンA(ConA)をマウスあるいはラットに投与すると、血漿中のtumor necrosis factor(TNF)-αおよびinterferon(IFN)-γが顕著に増量した。組織学的には、肝内において、クッパー細胞の増加とともに、リンパ球の集積、芽球化、増殖ならびに類洞外遊出が観察された(Fujikura et al.,1996;Kaneda et al.,1995)。リンパ球の類洞壁への付着は類洞内皮における接着分子VCAMの発現によることが示された。ConA投与肝では、リンパ球の肝への集積に引き続き、肝細胞の壊死ならびにアポトーシスが観察された。抗IFN-γ抗体の前投与によって肝障害が抑制されたことより、IFN-γがConA肝障害に関与していることが明らかになった(Mizuhara et al.,1996)。一方、同じくT細胞を活性化する抗CD3抗体投与では肝障害が誘起されなかったことから、肝障害にはサイトカイン増量と同時にConA独特の循環障害作用が必要とされることが示唆された。 2.interleukin(IL)-2投与実験 担癌マウスと非担癌マウスに大量のIL-2を投与し、肝の組織を検索すると、前者では後者に比べはるかに多数のlymphokine-activated killer(LAK)細胞が肝類洞外にみられたが、肝障害は起きなかった。このことは、サイトカインの肝リンパ球に対する効果が担癌状態によって修飾されること、さらにリンパ球の類洞外遊出のみでは肝障害にはつながらないことを示唆する(Tsuchida et al.,1995)。
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