研究概要 |
鳥類では哺乳類とは異なり、圧受容器である頚動脈洞は存在せず、また頚動脈小体は総頚動脈中央部外側に位置している。ニワトリで頚動脈小体動脈を含む4本の動脈が総頚動脈中央部から共通幹をなして分枝するが、筆者は総頚動脈とその枝にセロトニン陽性細胞が広く分布することを報告した(Kameda,1990a)。この血管壁に分布する内分泌細胞は、頚動脈小体の主細胞と同様な超微細構造を示し、特徴的な分泌顆粒と長い細胞突起を有している(Kameda,1990b)。また多くの神経線維を伴っている。鳥類では頚動脈洞が存在しないため、血圧調節にかかわる細胞が血管壁に沿って広く分布すると考えられる。ノイロペプチドY(NPY)は交感神経線維内にノルアドレナリン(NA)と共存し、強い血管収縮能を有する神経ペプチドである。筆者はニワトリ総頚動脈とその枝に分布するセロトニン陽性細胞はNPYの免疫反応をも示すことを報告した(Kameda,1990b)。今回immunogold法を用いての免疫電顕で、この内分泌細胞の分泌顆粒に特異的にNPY-金粒子が沈着することを示した(Kameda,in prep.)。またニワトリNPY mRNAのdigoxigenin標識オリゴヌクレオチドプローブを用いてin situハイブリダイゼーションを行った。その結果血管壁内分泌細胞に特異的にNPY遺伝子が局在することがわかった。さらに総頚動脈とその枝からmRNAを抽出し、poly(A)^+RNAに精製後、ニワチリNPYexon4プローブを用いてノーザンブロットを行い、NPYの特異的なbandを得ることができた。このような結果から血管壁内分泌細胞がNPYを合成していることを証明できた(Kameda et al.,in prep.)。哺乳動物では神経線維内に存在するNPYが、ニワトリでは血管壁内分泌細胞内に存在し、血圧の調節に関与していると考えられる。実験的に高血圧および低血圧を誘発したニワトリで、血管壁内分泌細胞が形態学的にどのように変動するか、またNPYの合成能がどのように変化するか検討中である。
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