研究概要 |
PACAP (Pituitary adenylate cyclase activating polypeptid)はヒツジの視床下部から抽出されたアミノ酸残基38個のペプチドであり、N末端1-28配列はVIPのそれと68%共通している。我々は、免疫組織化学法ならびにin situハイブリダイゼーション法を用いてラット精巣内におけるPACAPの遺伝子発現とその免疫活性を詳細に調べた結果(1)PACAP前駆体のmRNAは、精祖細胞および精母細胞で発現し、その前駆体分子は精子細胞にいたる過程でPC4によりプロセシングされること、(2)精子細胞(ステージ3-12)で産生されたPACAPは、細胞外に分泌され、autocrineあるいはparacrine様式で作用すること(3)PACAPのレセプターは生殖細胞に限局して分布していること、以上の可能性の高いことが明らかになった。本研究においては、上記の結果にもとずき、特に精子形成過程におけるPACAPの機能的意義を解明することに着目し、PACAPレセプターおよびその遺伝子を発現する細胞の分子組織細胞化学的同定を行った。その結果、PACAPレセプターの遺伝子を発現する細胞は、精子細胞をはじめとする生殖系列の一連の細胞であり、レセプタータンパクを発現する細胞は、精子細胞(ステージ7-12)に限局することがわかった(Arimura and Shioda, 1995)。さらに、精巣において、PACAPの発現には下垂体の前葉ホルモンとくに生殖腺刺激ホルモンが重要であることも明らかになった(Shuto et al., 1995)。これから、PACAPレセプター発現細胞におけるPACAPの分子制御機構の解析を進め、PACAPによる生殖細胞の分化誘導あるいは生存への関与を明らかにしたいと考えている。
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