研究概要 |
[目的]クモ膜顆粒の光顕的,電顕的観察を通して脳脊髄液の静脈洞への吸収・流入の機構としての“クモ膜顆粒"という特殊構造の発現とその存在の必然性について明らかにすることを目的とした。 [材料と方法]ヒト脳とミニブタを使用し,光顕的,走査電顕的に検索した。 [結果]光顕・電顕の観察結果よりmatrix(髄膜)貫通流という考えを導入した。この考えは砂利の層を水が濾過する浄化装置と似ている。髄液の場合は密な結合組織フィルター網よりなる髄膜をmatrixとして濾過していることが予想される。即ち,走査電顕での髄膜の凍結割断面の所見で見るように,重積した結合組織(膜)の間に無数の間隙が開いている。低分子水溶液にとってこの間の流れは十分可能である。 1.髄膜には髄液の明瞭な導出小管は見いだせない。 2.髄膜の硬い結合組織内では浄水器のフィルターの如き細隙ネットワーク構造をとっている。 3.クモ膜及びクモ膜下組織(流出路)は漏出液の変動(巾)に対応して,その流路は延長するのが一般的である。この延長がmatrixのとりわけ静脈洞近辺で面褶曲を生じてクモ膜顆粒となる(鍾乳洞のつららに似ている)。 以上のことより,髄液流出路は定常的脈管構造はもたず,限られた,かつ硬い結合組織内の裂隙流の形をとる開放循環に属する。それらは髄液腔を背景に限られた空間で流出されなくてはならない究極のvariable構造ということが出来る。しかも,その漏出構造がmatrix内のfiltration flowの形をとり,そのfluctuationに相応する予備的対応の構造としてクモ膜顆粒が形成されたと考える。
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