研究概要 |
本研究では心筋細胞膜に存在するCa^<2+>活性化クロライドチャネル,IC1(Ca),をPatch Clamp法を用いて生理学的機能、細胞内での調節機構、またどのようなシグナル伝達系により修飾をうけるかを明らかにする事を目的とする。特に細胞内Ca^<2+>負荷の時にこの電流は重要な意義を持つと予想されるので、細胞内Ca^<2+>貯蔵庫である筋小胞体との関連、相互作用を理解する事を目的とする。本年度は兎の心室筋細胞を単離し、Patch Clamp法を用いWhole Cell Clampで細胞内の種々のCa^<2+>濃度によるこのチャネルの活性化を検討した。その結果、細胞内Ca^<2+>濃度が1nM以下の場合はIC1(Ca)は活性化されず0.01μM以上で初めて活性化されることが解った。またCa^<2+>濃度を増加させるとIC1(Ca)の電流値は濃度依存性に増大した。しかし、その電位依存性の性質はCa^<2+>濃度により影響を受けなかった。次に、細胞外からのCa^<2+>流入と、細胞内Ca^<2+>貯蔵庫である筋小胞体からのCa^<2+>放出がIClCaの活性化にどのように関与しているかを以下の薬剤を用いて検討した。細胞外液をCa^<2+>を含まない溶液を用いたり、LタイプCa^<2+>チャネルブロッカーであるDihydropyridineを投与すると、IC l(Ca)は完全に抑制された。また、筋小胞体からのCa^<2+>放出を抑制するRyanodine,Caffeineの投与、筋小胞体へCa^<2+>取り込みを抑制するThapsigargineの投与によりICl(Ca)は完全に抑制された。以上の結果により、ICl(Ca)はDihydropyridine Ryanodineを介する“Ca^<2+>-induced Ca^<2+>release"機構により活性化されていることが判明した。 次に、ICl(Ca)のチャネルの孔のイオン選択性をCl^-をBr^-,I^-,F^-.NO^<3->等で検討した。細胞外液のCl^-をBr^-,I^-,SCN^-でチャネルコンダクタンスはSCN^-,I^-,Br^-ではCl^-より大であった。またこれらのイオンのCl^-に対する透過性を求めるために、それぞれのイオンでの逆転電位を求めGoldman-Hodgkin-Katzの式よりCl^-に対する透過性(P_<anion>/PCl)を求めた。イオン透過性の順番はSCN^->I‐Br^->Cl^-であり、Eisennmannの式の(1)に相当した。これらの結果は既知のクロラドイチャネルである、GABAレセプター、Glysinレセプターと同一でありチャネルの孔のイオン選択性が類似していることを示している。以上の結果はJournal of Physiology1995に発表した。
|