研究概要 |
延髄孤束核の神経細胞は脳及び髄液血管収縮機能を持っているが、それが1次的な神経性調節であるのか局所の代謝を介した2次的な変化なのか不明であった。そこで、新しく開発された酵素電極法によるバイオセンサーを用い、代謝の指標としての乳酸値の変化を孤束核化学刺激中に脊髄内でリアルタイムに観察した。1)in vitroで、lactateの濃度(X)と導出されるcurrentの変化分(Y)より回帰直線を作ると、Y=0.004+0.013Xの直線で、lactateの濃度と導出されるcurrentの変化分はP<0.01で有意に相関する。1μMの単位のlactateの濃度の測定が可能だと判明した。2)人工呼吸を止め無呼吸にすると、導出されるcurrentは14+2sより上昇し、最終的に1.457+0.308nA(112+24μMのlactateの濃度)へと上昇した。in vivoでバイオセンター電極がlactateの濃度に反応していることが明らかとなった。3)孤束核化学刺激による血圧低下が脊髄循環の自動調節の下限(60mmHg)の範囲内に保たれていた時(group1)、孤束核化学刺激中の脊髄内lactate濃度は有意な変化を示さなかった(n=21)。血圧低下が自動調節の下限以下に低下した時(group2)、孤束核化学刺激中の脊髄内lactate濃度は有意に(P<0.01)上昇した(3+3μM,n=18)。4)脱血により人為的に低血圧をもたらし、血圧低下が脊髄循環の自動調節の下限の範囲以内に保つように行なった時(group3)、脊髄内lactate濃度は有意な変化を示さなかった(n=3)。血圧低下が脊髄循環の自動調節の下限以下に低下するように行なった時、脊髄内lactate濃度は有意に(P<0.01)上昇した(14+3μM,n=11)。5)刺激部位の組織学的確認を行なった。以上より、酵素電極法によるバイオセンサーはlactate濃度の急速な変化を十分とらえ、孤束核化学刺激による脊髄血流の低下(自動調節の下限の範囲以内で実験されていた)は代謝の変化によるものではない事が示唆された。
|