研究概要 |
1.鼻腔で産生されるNO ヒト被験者を用いた研究の結果、鼻腔由来のNOの被験者の正常値は約400nl/minの排出率であった。また、鼻腔由来NOの運動によって著しく減少することが我々によって初めて明らかにされ、NOが鼻腔通気度の調節を担っている可能性が示唆された(Eur.Respir.J.9:556‐559,1996)。また、この研究に引き続いて運動中の呼気NOの測定をリアルタイム化し、またオンラインでコンピュータに取り込むことを試みた。その結果、微量なNOの変化が詳しく把握できるようになった(FASEB J.10(3):A330,1996)。また、我々の最近の研究では、鼻由来のNOが微妙な振動をして湧きあがっているようなデータも得られている。この振動は、興味深いことに、粘膜の血流と同期している(Am J Resp Crit Care Med 153(4):A851,1996)。 2.下気道で産生するNO 一時は、その存在すら否定されかけた下気道のNOであるが我々の最近の実験によれば、確実に存在することが確かめられるようになった。それは、リアルタイム呼気NO分析装置の開発に負うところが多い。本システムは、従来あったpneumotachやCO2ガス分析器とNO分析器をオンライン計測ができるように組み合わせたもので、呼気の一回呼吸ごとの分析や、呼気のパターン解析も行えるので、呼気NOの変化を詳しく分析できる。この際、信号の遅延を1ミリセカンドごとにデジタル化して行うソフトウエアの開発も行った。これは汎用性の高いプログラムで、従来困難とされた種々の周波数特性の異なる信号を同期させることができる。この装置を用いて、まず健康被験者や呼吸器疾患の患者の呼気NOの測定を行った。その結果、呼気NOは、むしろ気道の換気状態をよく反映するパラメータであることが確信されるようになった。
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