研究概要 |
未だ病因の不明な本態性高血圧症患者の一部は食塩負荷で昇圧しやすく食塩感受性群(salt-sensitive group)と呼ばれている。この規定因子には種々のものが想定されているが、腎交感神経を介する腎臓からのナトリウム排泄機能の異常がこの病態に関っている可能性がある。これまで食塩負荷に対する腎交感神経活動(RSNA)の応答は麻酔下動物で検討されてきたが、それらの結果は一致していない。 そこで、今回、まず無拘束・覚醒下ラットから記録したRSNAに対する脳室内投与高張食塩水の効果を、血圧、心拍数、飲水量変化とともに調べた。 1.Dahl食塩感受性(Dahl-S)並びに抵抗性(Dahl-R)ラット実験: (1)意識下で記録したRSNAに特異な発火パターンが見られた。心拍動に同期した群発活動に加えて、スパイク状で且つ心拍動と非同期の活動が混在して見られた。これらいずれのタイプの活動も神経節ブロッカー(ヘキサメトニューム)の投与で消失したので、腎交感遠心神経活動と考えられる。しかしその起源、生理的意義は不明である。 (2)側脳室へ高張食塩水を投与すると、血圧上昇を伴ってRSNAは抑制された。心拍数は有意な変化が認められなかった。また予想に反して、Dahl-SとDahl-R間でRSNAの抑制反応に差異は認められなかった。 (3)高張食塩水とアンジオテンシンII(AII)投与による飲水反応はDahl-Rラットに比べDahl-Sラットでは少なかった。 2.Sprague-Dawley(SD)ラット実験: 側脳室へ高張食塩水を投与すると、RSNAは用量依存性に抑制された。このRSNAの抑制反応は- (1)麻酔(ネンブタール)下では、顕著に減弱し、むしろ増加傾向を示した。 (2)食塩負荷によって誘起される飲水行動を制限すると、抑制反応は増大した。 (3)圧受容器除神経(SAD)ラットにおいても、RSNAの抑制反応は認められた。 (4)バゾプレッシンのV_1アンタゴニスト(OPC-21268,iv)の前処置により、有意に減弱したが、V_2アンタゴニスト(OPC-31260,iv)では影響を受けなかった。
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