| 研究概要 |
ATP遊離機構に関する薬理学的検討:ラット尾動脈において,ノルアドレナリンによるプリン物質の遊離は,細胞外Ca^<2+>依存性であり,細胞質中のCa^<2+>濃度の上昇が関連していることが明らかにされた。さらに,このプリン物質の遊離の関連するCa^<2+>の流入経路としてはα_1受容体刺激により活性化される受容体作動性チャネルの関与が大きいこと,このチャネルはランク非感受性・ペレパミル感受性という薬理学的性質を有する新しいタイプのチャンネルであることが併せて示唆された。
次に,内皮細胞におけるプリン物質遊離機構と内皮細胞由来弛緩因子(NO)産生放出機構の関連性について検討を加えた。その結果、ATP遊離作用を有するノルアドレナリンはNOの産生放出作用を示さないこと,反対に,NOを産生放出させるアセチルコリンはATP遊離作用を示さないことが明らかにされ,ラット尾動脈内皮細胞におけるプリン物質遊離機構とNO産生放出機構は共にCa^<2+>依存性であるという点で共通しているが、そのCa^<2+>動員機構は相互に影響を及ぼさず、むしろ互いに独立していることが示唆された。
ATP遊離機構に関する組織・形態学的検討:共焦点レーザー顕微鏡・画像解析装置(ACAS)を用い、細胞内Ca^<2+>濃度に及ぼすノルアドレナリンの影響をアセチルコリンと比較した。その結果、ノルアドレナリンおよびアセチルコリンはともに内皮細胞内のCa^<2+>濃度を著明に上昇させることが確認された。しかし、ノルアドレナリンによって細胞内Ca^<2+>濃度が上昇した細胞では、AChによる細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が認められなかったことから、プリン物質遊離機構とNOの産生放出機構に連関するCa^<2+>動員機構は異なったものであり、これは内皮細胞の違い(heterogeneity)に基づく可能性が示唆された。
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