研究概要 |
オルニチンサイクルは,アンモニアを尿素へと変換して解毒する代謝酵素系であり,同サイクル酵素の発現は主に肝臓に見られる。また,各酵素はグルココルチコイド等のホルモンにより強い誘導を受ける。オルニチンサイクル酵素遺伝子の肝臓選択的転写およびグルココルチコイドによる制御の調節機構の解明を目的として,同サイクルの最後の酵素であるアルギナーゼについて,ラット遺伝子のプロモーターおよびエンハンサーの解析を行った。1.HNF-4およびCOUP-TFによるアルギナーゼ・プロモーターの拮抗的制御機構の解析-HNF-4およびCOUP-TFは共にステロイドレセプタースーパーファミリーに属する因子である。HNF-4が肝臓選択的な因子であるのに対し,COUP-TFは汎在性の因子である。一見奇妙なことに,アルギナーゼ・プロモーターに対してはCOUP-TFが転写促進因子として作用するのに対しHNF-4は抑制因子として作用する。両因子のアルギナーゼ・プロモーターへの直接の結合は見られない。同プロモーターとHSV tkプロモーターとのキメラ・プロモーターの解析により,抑制性HNF-4応答性領域は,転写開始部位の上流-67ないし-35bpの領域に限局化された。2.二次的グルココルチコイド応答の解析-アルギナーゼ遺伝子のグルココルチコイドによる誘導は,何らかの転写因子の新たな合成を介する二次応答によることが知られている。アルギナーゼ・エンハンサーに存在するC/EBP結合部位は単独でグルココルチコイド応答を媒介しうる。この部位に結合する因子は同ホルモンによる誘導を受け,同因子はC/EBPβを含む。今回,ラット肝癌細胞H4IIEにおいて,C/EBPβ mRNA,同結合活性,アルギナーゼmRNAがグルココルチコイドに応答して順次上昇することを確認した。一方,ラット初代培養肝細胞において,C/EBPβに加えC/EBPδ mRNAがグルココルチコイドによる誘導を受けることを明らかにした。
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