研究概要 |
各種反応性、炎症性リンパ節炎、悪性リンパ腫におけるEpstein-Barrウイルス(EBV)の感染動態を、EBER-1,BCRF-1,に対するin situ hybridization(ISH)、EVB・DNAに対するPCR,LMP-1,ZEBRA,EBNA-2に対する免疫組織化学的方法で検索した。 非腫瘍性リンパ節病変では、膿瘍形成性肉芽腫性リンパ節炎(AFGL)と伝染性単核球症(IM)において、他の単純性反応性リンパ節炎、菊池病、結核性リンパ節炎などに比し著しく高率にEBER-1陽性細胞がみられることを明らかにした。またAFGLにおいては、かなりの症例で少数ではあるがZEBRAあるいはBHLF-1陽性細胞が認められ、EBVの再活性化が起こっていることが示唆された。AFGLにおけるEBER陽性細胞のCD21、CD23、HLA-DRのようなB細胞活性化抗原の発現の程度は、IMの場合に比し明らかに低く、EBVの潜伏感染状態の維持に関与しているものと考えられた。このような非腫瘍性疾患におけるEBVの潜伏感染状態が、EBVの再活性化あるいは悪性リンパ腫発生にどのように関連しているかについては本研究においては未だ明らかにされておらず、今後の課題である。 悪性リンパ腫においては、B細胞リンパ腫276例中49例、T細胞リンパ腫100例中31例、NKリンパ腫1例中1例、ホジキン病32例中17例にEBER-1陽性細胞を検出したが、殆ど全ての腫瘍細胞が陽性であるものは非ホジキンリンパ腫(NHL)10例に過ぎなかった。また、2重染色を行ったNHL26例中、EBER陽性細胞が腫瘍細胞とは異なることが判明したものが15例あった。これらのことは、NHLにおいては腫瘍細胞よりも非腫瘍性リンパ球の方により高頻度にEBVが感染していることを示しており、EBVの病因的役割については更なる研究が必要である。
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