研究概要 |
TNF receptorとFas分子は、細胞内構造が類似しており、細胞内シグナルの共通性が示唆される。TNFによる細胞死が、細胞内グルタチオン(GSH)の枯渇によって促進されるという報告があり、我々は、細胞内GSHと、Fas分子を介するアポ-シスの感受性について解析した。 ヒト白血病性T細胞株SUPT13,Jurkat,CCRF-CEM,及び、Fas抗原陽性であるが、抗Fas抗体非感受性であるそれらの変異株、さらに、ヒト末梢血単核細胞(PBL)を使用した。抗Fasモノクローナル抗体として我々が樹立した2D1を用いて、細胞内GSHの定量と比較検討した。 Fas非感受性である変異株では、オリジナル株に比べ細胞内GSHが有意に高濃度であった。BSO(Buthionine sulfoximine)やL-Cysteine/GSH free mediumを用いて、変異株の細胞内GSHを減少させると、Fas感受性が増加した。一方、NAC(N-acetyl cysteine)を用いて、Fas感受性であるオリジナル株の細胞内GSHを増加させると、Fas感受性が減少した。また、PBLの細胞内GSHを枯渇させると、そのFas感受性は増加する傾向があった。Fas抗原の発現は細胞内GSH濃度の変化に影響されないことをFACSにて確認した。これらの結果は、細胞内GSHがFas分子を介するアポトーシスのシグナル伝達を抑制することを示唆する。 この研究により、細胞内GSHの増加により、T細胞の活性化に伴う細胞死やHIV感染T細胞のアポトーシスを抑制などへの応用の可能性が示唆される。
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