研究概要 |
1.ヒトBリンパ腫のsevere combined immunodeficiency(SCID)マウス皮下移植転移モデルの確立 ヒトBリンパ腫培養株(HBL-1,HBL-2,HBL-4,HBL-5,HBL-6,HBL-7,HBL-8,Daudi,Raji)をSCIDマウスに皮下移植し、その転移能(spontaneous metastasis)を検討した結果、高転移株(HBL-2,HBL-7,HBL-8)と低転移株(HBL-1,HBL-4,HBL-5,HBL-6,Daudi,Raji)とに分けられた。特にHBL-7とHBL-8培養株は高率に遠隔転移を示し(HBL-7;73%,HBL-8:80%)、ヒトBリンパ腫のSCIDマウス転移モデルが確立された。 2.SBAレクチン反応性とSCIDマウス転移モデルにおける転移能との関連 高転移株と低転移株における転移能の差を検討するため種々のレクチンを用いて糖鎖の解析を行った。その結果、Glycine Max(SBA)レクチンと結合するヒトBリンパ腫培養株は低転移株、SBAレクチンと結合しないヒトBリンパ腫培養株は高転移株であるとの成績が得られた。高転移株は、ノイラミニダーゼ処理をするとSBAレクチンと結合することから、シアル酸がSBAレクチン結合部位をmaskingしている可能性が考えられた。SBAレクチンはムチン型および複合型糖鎖と結合すると考えられていることから、SCIDマウス転移モデルにおけるヒトBリンパ腫培養株の転移能はシアル酸によってmaskingされたムチン型あるいは複合型糖鎖のSBAレクチン結合部位と関連していることが示唆された。 3.VVA、ABAおよびPHA-Lレクチン反応性とヒトびまん性大細胞型Bリンパ腫の予後との関連ヒトびまん性大細胞型Bリンパ腫46例の生検材料を用いてレクチン染色を施し、糖鎖の発現と予後との関連を検討した。その結果、びまん性大細胞型Bリンパ腫はVicia villosa(VVA),Agaricus bisporus(ABA),Phascolus vulgaris(PHA)-Lレクチンに反応する糖鎖の有無が予後(累積生存率曲線、3年生存期間)と関連していることが示唆された。すなわち、これらのレクチンが認識する糖鎖の欠失、あるいはシアル化を含む糖鎖構造の変化に対するレクチン結合性の消失が予後と関連していることが示唆された。
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