研究概要 |
申請者は研究の主力をin vivoもしくは組織レベルにおき,幼少時から成人までの各種年代の動脈を様々な外科手術材料に含まれる動脈と、剖検例から蒐集し、免疫組織化学染色によって各種細胞増殖因子や情報伝達因子等(PDGF-a,b,FGF-b,TGF-b,VEGF,EGF,IL-1,IL-6,INF-g,iNOS,Rb蛋白,Bcl-2,Fas抗原,胎児型(合成型)平滑筋ミオシン重鎖、分化型平滑筋ミオシン重鎖)の発現と消退の推移を検討した。しかしヒトでのin vivoの研究には自ずと限界がある。本研究はあくまでもヒトの血管病変に視座をおくものであるが、人体病理学といえども動物実験に依存せざるを得ない点はラットあるいは家兎の動脈障害実験材料を併用し、血管組織構造改築に関わる諸因子の相互関連を時間軸の上で明らかにすることを目指すした。その結果,肥厚内膜に増殖する平滑筋細胞はPDGF-b,FGF-b,TGF-b,VEGF,iNOS,Rb蛋白,Bcl-2,Fas抗原,等を発現することが明らかになった。以上のことは経皮冠動脈拡張術(PTCA)後冠動脈再狭窄における内膜平滑筋細胞は増殖のみならず,新生血管誘導のための因子,細胞死のための因子等をも発現し,きわめて動的な細胞動態を示すことが示唆された。血管材料の各種因子のin situ hybridizationによるmRNA発現の組織レベルでの系統的検討は今も継続しているが発表には至っていない。
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