研究概要 |
思春期に好発する難治性腫瘍であるEwing肉腫/PNET腫瘍群には,特徴的な染色体異常t(11;22), t(21;22)及びt(7;22)が存在し.それに由来するEWS遺伝子(22番染色体)と,etsファミリーであるFLI-1(11番染色体),ERG(21番染色体),ETV-1(7番染色体)とのキメラ遺伝子の発現が確認されている.その遺伝子をRT-PCRによって同定し,腫瘍の確定診断に用いること,また新たな腫瘍特異的キメラ遺伝子の単離を目的として研究を行った. 26例のEwing肉腫/PNET腫瘍群の手術症例と14細胞株からtotal RNAを抽出し,RT-PCRを行った.これらの80%に既知のキメラ遺伝子を同定し,全ての塩基配列を決定した.これらの結果は,キメラ遺伝子が腫瘍群の特異的な指標となること,また遺伝子診断に有用であることを明らかにした.塩基配列の決定により,これらのキメラ遺伝子はすべてin frameであることが明らかになり,同遺伝子が腫瘍発生に重要な役割を果たしている事も示唆する結果となった.さらに,既知の遺伝子を同定できない症例についてEWSをプローブとしてサザン解析を行い,EWS遺伝子に再構成を認めた例についてnested PCRを試み,クローニング後に塩基配列を決定した.その結果,一例より新たなキメラ遺伝子EWS/E1A-Fを単離した(GenBank no. U35622).
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