研究概要 |
今年度の研究ではリポソーム封入クロドロネートの投与によりマウスの組織マクロファージを選択的かつ強力に障害枯渇し,肝(Yamamoto et al., 1995),脾(Umezu et al., 1995),腹腔および大網のマクロファージ(Hong et al. 1996)の再生過程を検討した。その結果,1)肝におけるKupffer細胞の再生に先立ちマクロファージ前駆細胞が肝内で増殖し、これがKupffer細胞に分化すること,2)脾においては数種のマクロファージ亜群が存在し,それぞれ本法による消失と回復過程で異なった動態を示すこと,3)大網の乳斑に存在するマクロファージ前駆細胞は局所で増殖し,特異な突起を有する大綱マクロファージに分化すること,4)肝や大網のマクロファージの増殖や分化にはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)が重要な役割を果たしていること,5)肝に存在する胸線外分化T細胞の分化にはマクロファージではなく,肝細胞が重要である(Kawachi et al., 1995)ことを明らかにした。現在,Kupffer細胞の枯渇・減少状態における炎症反応をZymosan投与による肝肉芽腫形成モデルで検討中であり,マクロファージの除去によって肉芽種形成,炎症性サイトカインの発現が抑制されるという結果を得ている。 クロドロネートの水溶液の状態ではマクロファージに対する障害性はなく,リポソームに封入されて障害作用を発揮するが,われわれはリポソーム封入クロドロネートの細胞内挙動を観察し,マクロファージがアポトーシスに陥ることを形態学的,分子生物学的に立証した(内藤ら,1996)。これらによって本法がマクロファージのアポトーシスの解明にも重要なモデルであることが明らかにされた。
|