研究概要 |
今年度研究の成果は以下のごとくであった。1.形質のよく判明した各分化段階のB細胞株26株とを用いて、Fas抗原の発現と抗体に対する感受性を^3H-thymididine uptake法とflow cytometric PI staining法で検討した。培養およびFACS関連器具試薬、各種抗体を科研費補助金により購入し上記細胞株の維持と検索を行なった。その結果、Fas抗原はpre-pre-Bからpre-Bの段階で一部に弱く発現した。peripheral Bの段階にあるものではFas抗原を強く発現するものと欠くものがあった。plasma cellの分化段階にあるものはFas抗原を発現していた。抗体に対する感受性はBurkittリンパ腫由来のものを除き発現量に依存していた。一方Bcl-2蛋白、Baxはひろく発現しておりFas抗原とは直接の関連はみられなかった。2.Fas抗原を介するアポトーシスに対するIL-4,IL-5,IL-6やCD40抗体(科研費で購入)の影響を検討したが細胞株によって影響が一定せず概括的な結論を得るに至らなかった。しかし抗原提示に重要な働きをするHLA-D抗原のframeworkに対する抗体で刺激することによりpre-preB,pre-B,peripheral Bの一部でFas抗原を介するアポトーシスが増強されることを見いだした。後者ではその中にmemory Bの形質を示すものが含まれていた。3.正常ヒト骨髄細胞におけるFas抗原の発現をFACSを用い検討し(試薬等科研費で購入)CD10^+CD19^+の未熟B細胞、CD38^<++>CD19^<19>の形質細胞でもFas抗原が発現していることを見いだした。4.以上の知見により以下の点が判明した。(1)Fas抗原は未熟なB細胞で徐々に発現を増し成熟Bでは少なくともmemoryの段階にあるものや形質細胞では発現し機能している。(2)感受性にHLA-D抗原を介するシグナリングが関与している。従って免疫現象の終結に関わる可能性が示唆される。(3)Burkittリンパ腫では特殊な制御が予想される。5.これらの成果はEur J Immunol,Br J Hematolに公表したがつぎにはFasリガンドとの関係を検討したい。
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