研究概要 |
申請者らは、本研究において血栓性疾患発症機構や動脈硬化の血管壁の解析を血管内皮、平滑筋細胞やマクロファージの細胞機能に関連して、おもに血管壁での血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の生理機能を中心にして、病理学的ならびに細胞生物学的研究を進め以下の事を明らかにしてきた。 (1)動脈硬化巣の血栓原性について 動脈硬化巣の凝固線溶関連因子の免疫組織化学的検討より、外因系凝固の開始因子である組織因子(組織トロンボプラスチン)が泡沫細胞などに、抗線溶作用を有するとされるLp(a)はフィブリンを被覆するように、動脈硬化巣内膜で局在し、さらにそれらは病変の進行に伴い増加する事することを明らかにした(Pathol Res Pract,1996)。同時に、動脈硬化の進展に伴う血管の血栓原性の亢進を、血管壁自身の組織因子依存的な凝固活性として、直接測定する方法の開発・確立し、その活性の亢進を実証した(Thromb Res,1996)。 (2)動脈硬化巣の脆弱性について 動脈硬化度と動脈硬化内膜内の新生血管密度、出血との相関を形態学的に明らかにし粥腫破綻に新生血管などによる血管の脆弱化が関連する事を指摘した(Hum Pathol,1995)。加えて、硬化巣内でのVEGFの発現母細胞の同定を免疫組織化学的検討より行い、この血管新生にVEGFが関与しうることを指摘するとともに、HVJリポソームによるVEGF遺伝子の動脈硬化血管壁内導入による動脈硬化内膜内血管新生モデルの構築によりその仮説を実証し(Lab Invest,1996)、血管新生の分子病態学的意義についても明らかにしてきた(Lab Invest,1996;Placenta,1996;Virchows Arch,1996)。さらに培養実験より、フィブリン関連物質の血管新生促進作用を証明した(In Vitro Cell Dev Biol,1995)。 これらより、動脈硬化血管壁での血栓形成と血管新生の密接な関係を明らかにした。
|