1)種特異的補体制御膜因子が存在する自己細胞では補体反応が強力に抑制され、それらを持たない侵入異物にのみ補体は反応する仕組みになっている。異種細胞にはこれらの因子が存在しないので補体反応が起こり、異種移植などでは補体による急性拒否反応がおこる一因となる。そこで、これらの遺伝子をブタに導入したトランスジェニックブタの作成が試みられているが、ヒトへの異種移植用トランスジェニック動物の実用化に当たっては、動物実験による基礎研究の知見が必須である。 2)そこで実験動物の種特異的補体制御膜因子のcDNAクローニングを行いラットの5I2抗原(Crry)を得たので、その遺伝子を導入発現させたトランスフェクタントを作成した。5I2抗原cDNAをpCDM8またはpBK-CMVベクター等を用いてトランスフェクション用のベクターを構築し、CHOやCOS細胞にエレクトロポーレーション法にてトランスフェクションした。トランスフェクタントでの5I2抗原cDNA転写発現量をノーザンブロッド法や半定量RT-PCR法で測定した。細胞膜上への蛋白発現量は5I2抗原に対するモノクローナル抗体5I2を用いて免疫蛍光染色し、フローサイトメトリーで定量した。発現させた5I2抗原がラット補体反応を抑制することを確かめた。 3)ラット補体の反応を強力に抑制することを確認したトランスフェクト細胞をラット皮下、肝皮膜下、肝臓等に接種してそれらの消長を継続的に解析することにより、補体制御膜因子遺伝子導入による異種移植反応の抑制を実験動物で解析する。本研究は異種移植反応の制御に多くの情報をもたらすものである。
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