研究概要 |
本研究は,申請者が樹立・維持する可移植性ラット甲状腺がん細胞株および発がんモデルを用いretおよびtrkがん原遺伝子の再配列を検討する,同時に他のがん関連遺伝子変化を検索することで,甲状腺がんの発生過程を把握することが目的である。 ヒトと高い相同性がみられるret遺伝子のkinase domainを標的にヒトプライマーを用いRT-PCRを行い,増殖された配列を決定しラットの塩基配列を同定した.ヒトとの相同性はアミノ酸配列で95.8%,塩基配列では97%であった.我々のラット甲状腺がんからのmRNAを用いてのNorthern blotの検索,またKlugbaure,S.et al(Oncogen 11:2459-2467,1995)が提唱するMultiplex PCRおよび5′-REAC法での結果,retがん原遺伝子の再配列はみとめられなかった.また,trk遺伝子についても同様な方法でアプローチしたが配列変化はみとめなかった.共同研究を行っているDr Isabella Ceccherini(Laboratorio de Genetica Molecolare,Italy)らの結果も同様であった. 他のがん関連遺伝子変化はras,p53,TSH-R,およびGas遺伝子の変化に注目した.結果はKi-ras遺伝子のcodon 12にG→Aへの変異が高頻度に見られた.また,Gas遺伝子にも低頻度ながら同様な遺伝子変異が観察された.以上のことから我々が作成した甲状腺がんはretおよびtrkがん原遺伝子には変化を起こさず,むしろrasおよびtrk遺伝子変異が原因とする発生過程を経たと考えられた.
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