研究概要 |
アフリカトリパノソーマは,虫体表面を覆う変異性の糖蛋白質(VSG)の抗原型を変えるという策により宿主からの排除作用をまぬがれる。Trypanosoma b.gambiense を用いて異変VSGの発現スイッチにおける制御について検討している。Wellcome株のVSGでKuTat1,から派生したKuTat2,そしてKuTat3についてもモノクロナル抗体(Mab)が得られた。KuTat3の原虫を培養するとおよそ3カ月でKuTat1の原虫が大勢を占めるようになった。KuTat1では6カ月培養しても大勢は変わらなかった。そのようなVATによる原虫数比をより正確に知る方法として,Mabを利用して原虫を蛍光ラベルしてFACSにより解析することを考えたが,1:10^3のオーダーまでは可能であるが,1:10^4以上の精度では決定できないことが判明した。また,リシンA鎖結合Mabを用いて選別する方法を試みた。リシンA鎖のみでは原虫は死なず,リシンA鎖結合Mabにより選択的に除くことが可能であることがわかったが,原虫が死ぬまで時間を要することから,残った正味の原虫数を知ることができない。In vivoでは,VATによる原虫の増殖速度に大きな差はないが,In vitroでは一定しない結果が得られ,現在の培養法ではVAT比の変化を解析するのに限界のあることが判明した。VSGのC末にある交差反応部位に対する抗体でVSGを分離することが可能であり,ビオチンラベルして泳動パターンを観ると,VSG以外にも複数の表面蛋白質が認められ,リン酸化のパターンも同様であった。トリパノソーマ原虫のmRNAが共通して有する5′側のミニエクソン配列と,3′側にあるT.bruceiに共通な配列をもとにしたオリゴマーをプライマーとして,RT-PCR法により血流型に加えメタサイクリックVSG(M-VSG)遺伝子もクローニングすることができた。M-VSGは血流型になった時点でも保持されていることが確かめられ,これが優位に出現するVSGの一つではないかとして位置づけられる。
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