研究課題/領域番号 |
07670309
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
細菌学(含真菌学)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
余 明順 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (70093482)
|
研究分担者 |
飯田 哲也 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (90221746)
本田 武司 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60029808)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1995年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
|
キーワード | 腸炎ビブリオ / 耐熱性溶血毒 / タンパクリン酸化 / 溶血機構 / Hemolysis / Phosphorylation |
研究概要 |
食中毒原因菌である腸炎ビブリオの産生する耐熱性溶血毒(TDH)は、腸炎ビブリオ感染症の主要病原因子と考えられている。TDHの示す生物活性は多彩で、溶血活性をはじめ、細胞毒性、腸管毒性、致死活性(心臓毒性)などが知られているが、それらの作用機構についてはほとんど研究が進んでいない現状にある。われわれはTDHの作用機構解明の一助とするため、比較的解析の容易な系として溶血系を選び、溶血機構の解析に着手した。これまでにTDHと血球の結合に関して、(1)結合の初期に温度依存性のステップがあること、(2)溶血感受性血球にも非感受性血球にも同様の親和性でTDHが結合すること(TDHは種々の動物血球に溶血活性を示すが、ウマ血球は全く溶血しないという特徴をもっている)、さらにpore formationが観察されており、colloidal osmosisによって溶血がおこることなどを明らかにしてきた。本研究では溶血感受性の違いに拘わらず結合した後、感受性血球で起こる特異生化学反応に的を絞って検討した。外部からのシグナルを伝える反応としてよく知られている蛋白リン酸化について調べた結果、感受性血球膜上で特異的に25kDa蛋白のリン酸化が誘導されることが明らかになった。このリン酸化はprotein kinase Cinhibitorによって阻害され、さらに、同じinhibitorによってTDHの溶血阻害も見られた。また、われわれの研究室で作成した変異TDH、R7(溶血活性は著しく低下しているが、血球への結合能は保持している)を用いて調べてみると、R7では25kDa蛋白のリン酸化の誘導は見られず、TDHとR7を共存させるとTDHによる25kDa蛋白リン酸化が競合的に阻害された(結合段階で競合するためと考えられる)。これらの結果から感受性血球膜上で起こる25kDa蛋白のリン酸化は血球を溶血に導くために必須のステップである可能性が示唆された。TDHを含めた細胞破壊型毒素(溶血毒)でこのようなsignal transductionの報告は見られず、本研究で明らかにした成績はTDHの溶血機構の解明に役立つとともに、他の溶血毒の作用機構の解明に有益な情報となりうると考えられる。
|