研究概要 |
1.fur遺伝子のクローニングと解析:腸炎ビブリオWP1株染色体DNAをBamHI-ClaIで完全消化し、この断片をpACYA184のBglII-CldIサイトに挿入した。大腸菌形質転換体をfurプローブで検索し、陽性クローンを得た。本クローンは大腸菌H1780 (fur,fiu :: λplacMu53)を機能的に相補したので、サブクローン体を作成し、塩基配列を決定した。その結果、ATGから始まりTAAで終る149アミノ酸をコードするORFが見つかった。そのアミノ酸レベルでの相同性(identity)はV.vulnificus,V.cholerae,E.coliのFurに対してそれぞれ95.9%,92.0%,80.7%であった。 2.マンガン耐性株の解析:WP1から10mM MgCl_2含有プレート上で増殖できる耐性株を得、これらにおける鉄獲得系発現の脱制御を調べた。73-kDaビブリオフェリン(VF)-Fe^<3+>レセプターや83-kDaヘミンレセプターの発現並びにVF産生が鉄豊富下でも認められ、耐性株におけるfur遺伝子の変異が示された。 3.プロテアーゼ産生に及ぼす培地鉄濃度の影響:数種の腸炎ビブリオ株について検討した所、いずれも鉄欠乏下に培養するとその産生量が3倍以上に増加した。マンガン耐性株では親株と比較して、鉄豊富下でも約5倍の産生量を示し、プロテアーゼ産生もFurレギュロンに属すことが判明した。プロテアーゼは病原因子の一つとして最近特に注目されており、今後さらに検討を加える予定である。 4.腸炎ビブリオの由来別VF産生性:患者由来株(n=44,873.8±117.4μM/OD)、食品由来株(n=35,423.8±64.6)、環境由来株(n=25,378.8±37.2)で、有意に(p<0.01)患者由来株がVF高産生性であった。この結果はVF産生性が本菌の腸管定着や病原性発現に関与する因子であることを強く示唆した。 5.FURTA法による鉄制御遺伝子の単離:本法により、Fur boxを持つと思われる遺伝子を単離した。0.1-1.3kbpのインサートを持っており、これらをプローブとして鉄制御遺伝子全体の単離が可能となった。
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