研究概要 |
pre-MRSA,N315株(コアグラーゼ2型),及び1961年にイギリスで初めて分離されたMRSA,NCTC10442株(コアグラーゼ3型)を用いてmecAの上流及び下流の外来性DNA(mec領域DNA)のクローニングを行い、mec領域DNAのほぼ全領域をクローニングすることができた。MSSA,NCTC8325株より、N315株に於けるmecA上流側のMSSAと共通する領域をプローブとしてmec領域DNAの挿入部位を含むクローンを得た。クローニングしたMRSA、N315株、NCTC10442株の上流側、及び下流側の塩基配列をMSSA,NCTC8325株の塩基配列と比較することにより、初めて、染色体上の挿入部位をあきらかにするとともに、外来性DNAの領域を特定することができた。N315株の場合約50kb,NCTC10442株の場合、約35kbのmec領域DNAが存在していた。それらの塩基配列の決定を試みN315株のmecA上流約40kbの塩基配列はほぼ決定でき、今後詳しい解析を行う段階である。コアグラーゼ4型MRSA(1980年代にヨーロッパ諸国で蔓延した菌株)のmec領域DNAに関しては、85/3907株を用いて現在クローニングを行い、全領域をクローニングする途上にあるが、これまでのところN315株、NCTC10442株、85/3907株のmec領域DNAはそれぞれ異なっていることが推測されているが、これらすべてのmec領域DNAの末端には塩基配列の良く似た不完全なinverted repeatsが存在することが明らかとなった。mec領域DNAの染色体への挿入及び伝播の機構の結論をだすところまで今一歩のところに近づいた段階である。
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