研究概要 |
2年間の研究期間内に、以下の点についての知見・結果を得た。 1)BALB/c,AKR/Jなどのマウスから胸腺基質細胞ラインを樹立した。 2)BALB/c由来の基質細胞のうちThy1抗原を発現しているラインで、Thy1分子から増殖抑制シグナルが入り得る。 3)胸腺基質細胞のあるものは、Srcファミリー非受容体型チロシンキナーゼである、Src,Fgrなどを発現している。Fgrに対する単クローン抗体2H2(当教室にて確立)を用いた免疫組織化学的検索から、胸腺髄質の基質細胞にFgrが発現していることが判明した(Microbiol.Immunol.40:223-21,1996.)。 4)胸腺皮質・髄質上皮細胞を用い、T細胞クローンDB14に抗原提示すると、T細胞機能の一部のみを活性化することが示された(Microbiol.Immunol.41:51-61,1997.)。 5)AKR由来の基質細胞に対して単クローン抗体15クローンを作製した。うち4クローンについて、その組織分布・マウスの系統間での発現などを明らかにした。 6)胸腺基質細胞を3次元的に培養し、マウス個体に移植する担体として、胸腺内への移入にはゼラチンベースの多孔質ビーズ,腎被膜下への移植には、フィブリンクロットと多孔質ビーズの組合せが候補になるものと考えられたが、基質細胞への適合性の面で改良すべき点が多数観察された。 7)マウス個体へ上記の再構成胸腺の移植を行った。腎被膜下に移植基質細胞の単層〜錯綜した構造および一部腎組織への陥入、基質細胞層への単核球の集簇を認めた。 8)aly/aly(リンパ節・パイエル板欠損)マウスより得られた結果から、胸腺組織の再構築の際、特定の構成基質細胞の欠損が存在すると胸腺内T細胞選択過程に重大な欠陥を生じる可能性が示唆された(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:2472-2477,1997)。
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