研究概要 |
本年度計画したプレT細胞クローン(BTK-12およびTK-24)の分化能と増殖機構およびプレT細胞に特異的なpTa鎖の発現,モノクローナル抗体の作成について以下の成績を得た. 1.BTK-12およびBTK-24を,種々の経路でマウスに注射後その分化能を調べた結果,BTK-24は胸腺内注射によってαβ型TCRを発現するCD4^+CD8^+およびCD4^+CD8^-細胞まで分化することがわかった.一方,BTK-12はいずれの方法によっても分化を示さなかった.BTK-24は新生仔胸腺由来のストローマ細胞との共培養によっても分化誘導されたことから,ある種の胸腺ストローマ細胞はプレT細胞の分化誘導を引き起こす特異的なシグナルを伝達することが示唆された. 2.抗接着分子抗体を用いてBTKクローンの増殖機構を検討した結果,BTK-12はストローマ細胞と接着非依存的に増殖するのに対して,BTK-24はストローマ細胞との接着が増殖に必須であることがわかった.この接着を媒介するリンパ球側の分子はVLA-4であるが,ストローマ側の分子については未知のVLA-4のリガンドの存在が示唆された.また,接着非依存性の増殖は,ストローマ細胞由来の液性因子によって代用されその分子量は約10-30kDaであることがわかった. 3.BTK-12およびBTK-24ともにpTαのmRNAを発現していることが認められた.また細胞質内β鎖およびCD3蛋白も発現していることが確認されたが,細胞表面へのβ鎖およびCD3の発現は認められなかった. 4.BTK-24に対して作成したモノクローナル抗体MF-45がプロTからプレT細胞期の段階の未熟T系列細胞と反応している可能性が示され,今後この点を詳しく解析する予定である.
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