研究概要 |
血清レクチンの1つマンノース結合蛋白(MBP)は生体防御に関与している。MBPは補体成分C/S様のセリンプロテアーゼのMASPと複合体を形成しておりMBPが糖鎖リガンドに結合すると,MASPはC4とC2を分解する。この活性化経路は補体のレクチン経路と呼ばれている。古典的経路において,Clsは血清中のC1インヒビター(C1INH)により活性化が制御されているが,レクチン経路においても構造 機能上C1sに類似のMASPがC1INHの制御を受けているかを本研究で検討した。ヒト血清より精製したMBP,MASP,C1INHを用いて,MASPによるC4分解活性およびマンナン結合MBP-MASPによるC3コンバルターゼ(C4b2a)形成能に及ぼすC1INHの効果を調べたところ,いずれの系においてもC1INHは阻害的に働いた。またC1INHの阻害様式を検討したところ,上記の2つの系において,いずれもMASP-C1INHが1分子ずつ強固に結合した複合体の形成が見られた。しかし,Cls-C1INHが形成後,複合体がC1qから解離することによりC1qのオプソニン活性が発揮されるのに比して,MASP-C1INHでは,この複合体のMBPからの解離が認められなかった。これらの結果は,C1INHは古典的経路とレクチン経路において,それらを構成するセリンプロテアーゼに対して阻害的に作用するものの,両者で,異なる生物活性を持つことを示している。
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