研究概要 |
近年、ストレス社会にといわれるほど、我々の周りには数多くのストレスが存在する。ストレスは、いろいろな形で心身の異常をもたらし、老化にも関係していると考えられる。しかし、ヒトにおける慢性ストレス状態を反映した動物モデルによる研究は極めて少ない。そこで、老化促進モデルマウス(SAMP8)を用い、長時間のストレス負荷が老化に与える影響について検討したので報告する。 【方法】生後6週齢のSAMP8をストレス負荷群と非ストレス負荷群に分け、さらにストレス負荷群を30分間拘束ストレスを行うストレス30群、60分間行うストレス60群、強制運動を10分間行う強制運動10群、30分間行う強制運動30群に分けた。拘束ストレスは、無数に穴を開けたフイルムケースにマウスを固定し、一定時間暗所に放置した。強制運動負荷は、ローターロードにて時速11kmで一定時間負荷を行った。実験開始後、毎日体重を測定し、一定時間毎に老化度、実験開始後12週目で受動的回避反応試験により学習・記憶の判定を行った。【結果】体重増加量は、ストレス30,60群、強制運動10,30群いずれも非ストレス群に比して増加量の減少を認めた。しかし、ストレス30,60群および強制運動10,30群の差は認められなかった。外観老化の指標となる老化度は、ストレス30,60群で非ストレス群に比し、実験開始直後より著しい老化度の上昇が認められた。しかし、ストレス負荷時間による老化度の差は認められなかった。強制運動10分間負荷群では老化度の上昇は認められず、むしろ非ストレス群の方が高い傾向であったが、30分間負荷群では実験開始後11週目頃より不可群で老化度の上昇が認められた。学習・記憶の判定は、潜時300秒以上に達する学習・記憶良好なマウスの割合を検討した。ストレス60群は非ストレス群に比し学習・記憶良好マウスの割合が多い傾向にあった。一方、強制運動群では学習・記憶の悪化が認められ、特に30群では著しかった。【まとめ】以上の結果より、心理的にも強いストレスを受けると考えられる拘束ストレスでは、負荷時間に関係なく体重減少、老化度の進行が認められるが、精神的緊張のためか学習・記憶は良好であった。一方、強制的な運動負荷のように、自由度があるが身体的疲労を伴うようなストレスは、負荷時間によって老化度および学習・記憶障害の進行が認められた。
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