研究概要 |
我々は、これまで、外因性および内因性神経毒性物質の作用機序とそれらの毒性抑制について検討してきた[Igisu & Suzuki,Science224:753,1984;Igisu & Nakamura,Biochem Biophys Res Commun 137:323,1986;Matsuoka,Igisu et al.Brit J Ind Med 47:44,1990など]。この過程で、カルニチン(4-トリメチルアミノ-3-ヒドロキシ酪酸)がアンモニアの神経毒性を抑制し得ることを確認した[Matsuoka,Igisu et al.Brain Res 567:328,1991;Matsuoka & Igisu,Biochem Pharmacol 46:159,1993]。特に、痙攣抑制効果は、著明であった。そこで、この効果がアンモニア誘発痙攣にのみ限られるものかどうかをみるため、痙攣誘発剤としては最も一般的なものの一つであるpentylenetetrazol(PTZ)をもちいて検討した。その結果、カルニチンがPTZ誘発痙攣に対しても臨床的に明らかに有効であることを認めた。更に、痙攣に伴う脳エネルギー代謝の変化も抑制した。ここでアンモニア誘発痙攣の場合と異なる点は、L型がD型に比してより有効であったことである。これらは、カルニチンの抗痙攣作用が特定の痙攣モデルに限られないことを示している[Yu,Iryo,Matsuoka,Igisu et al.Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol(in press)。従って、今後さらに脳防御物質としてのカルニチンについて追究する価値があるように思われる。
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