研究概要 |
平成7、8両年度で1988年7月〜96年12月の間に調査出来た778名(総検体数1,314)を対象として梅毒血清反応ならびにChlamjdia trachomatis (以下C. trachomatis) IgG、IgA抗体価を測定し性感染症に関与する性行動の面接調査の結果と比較検討した。ちなみにこの集団におけるHIV抗体陽性者は4名(0.5%)であり、薬剤常用者や外国人と性交渉をもつ例がごく少数であることがこのHIV侵襲度の低いことに関与していると考えられたが下記のように梅毒やC. trachomatisの侵淫は高度でありHIV感染に関するリスクは高く同集団を対象とする性感染症の総合的な追跡調査の必要性の高さが痛感された。 (1)梅毒血清反応を全1,314検体に実施。TPHA陽性者は27.1%、ガラス板法陽性者は25検体(18.2%)と高率であった。年次による変化は少なく、調査時の年齢や同性愛経験年数と共にに陽性率は上昇、性行為相手多数例や不特定相手を主体とする例に陽性者が多くTPHA値が高値を示す傾向があり、肛門性交の頻度、性行為の役割(男/女/両性役)やコンドーム使用の有無と陽性率の関連はなかった。 (2) C.trachomatis IgG抗体、IgA抗体各抗体保有状況を729例について実施した。IgG抗体陽性者は52.4%、IgA抗体陽性者は5.4%と高率であった。年齢や経験年数による差はほとんどないことから、男性同性愛集団参加後比較的早期に感染を経過すると思われ、一方コンドーム使用者で相手数が少ない群や特定の相手だけと性交渉をもつ群に陽性率が低い傾向があることから、C. trachomatis感染対策としてより安全な性行動に行動を変容することが重要であり、今後さらに詳細な継続調査が必要と思われる。
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