研究概要 |
成人病の第一次予防の立場から学齢期にある我が国の小児の成人病のリスクファクターを明らかにし,その知見をベースにした学校における包括的健康教育プログラムを開発する目的から本研究では地域に基盤を置いた疫学調査(Community-based epidemiologic study)と学校における健康教育(School-based study)を相互に関連させて進め,以下の結果を得た. (1)研究対象地域である兵庫県津名郡五色町の10〜15歳(小学校高学年〜中学生)を対象に,昭和59年から毎年実施されている児童・生徒の健康実態調査データを疫学的に解析し,血清コレステロールなどの成人病の危険因子にはTracking現象があることを確認するとともに,この時期のこどもの健康上問題となる貧血についても実態を明らかにした.また栄養調査から対象地域の児童・生徒の栄養摂取の実態が欧米のそれとは異なることを明らかにした.さらにライフスタイルについての調査を行い,朝食の規則正しい摂取が小児の健康に関する知識,態度および行動に強い影響を与えることを明らかにした. (2)成人病のリスクファクターのうち,Apolipoproteinについて詳細に検討し,発達段階にある健常小児におけるApolipoproteinの分布を明らかにするとともに血清脂質との関連は男子,女子とも12,13歳で強いことを明らかにした. (3)10年間にわたる児童・生徒の健康実態調査の成績をベースに小児期からの成人病予防テキスト,教師のための手引を作成するとともに,ICカードを利用した健康指標の個人追跡システムを構築した.また学校における健康教育の実施に向けて学校教育関係者,地域の関係機関との連携システムを構築した.
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