研究概要 |
急速な高齢化社会を迎えつつある我が国において,今後の保健福祉サービスのあり方を考える上で,住民の健康状態を適切に評価すること,さらに健康状態とともに医療費増加の関連要因についての検討は重要な課題と考えられる。そこで,高齢者の健康状態を総合的に把握することを目的として,生活の質(効用)による評価を実施するとともに,保健福祉サービスおよび生活様式が,生活の質にどのような影響を与えているかを検討したいと考えた。つぎに,医療費の増加に影響する要因を検討する目的で,保健福祉サービスおよび生活様式,生活の質の項目について,経済学的分析を実施した。その結果,生活の質を指標として効用(ultility,死亡0,健康1)は,70歳以上の高齢者で低下し,また男女間差を認めた。地域別には,ほとんど差を認めなかった。また,生活の質の構造を因子分析により検討した結果,効用と他の指標(幸福感,多属性の健康状態)との相互関連性を認めた。また,医療費に関連する要因としては生活の質が最大の要因であることが示唆された。また,生活の質(効用)の測定法として世界的に広く用いられているEuroQoL(York大学)を用い検討を行った結果,諸外国の調査結果と良く一致しており,また,地域調査(評点尺度)による測定結果とも相関が認められた。一方,生活の質を多属性効用調査票(McMaster大学)により測定した。その結果,視力および聴力,会話,移動,手指機能,感情,認知能力,疼通の8属性により生活の質が把握できた。また,多属性効用値関数により効用値(健康1,死亡0)を推定した結果,40歳-60歳の対象者では,男女それぞれ0.61,0.60,65歳以上では,0.60,0.56であった。この効用値は評点尺度と比較的近似していた。
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