研究概要 |
鉛毒性発現気候から考え,鉛の生物学的モニタリング指標としては全血鉛よりも血漿鉛を用いるのがより妥当と考え,鉛の曝露している動物,作業者の血漿鉛と健康影響との関連について検討した。 1 実験的研究:日本白色種の雄ウサギ22羽に浸透圧ポンプを用いて各種濃度の酢酸鉛溶液を4週間にわたり頚頭静脈内に投与し,無処置のウサギ7羽とともに生態影響を測定した。血漿鉛の測定はMIBK抽出後,MIP-MSを用いて測定した。血漿鉛10μg/L以上で全血ALAD,血漿カルシウム低下,血漿鉛20μg/L以上で血漿ならびに尿δ-ALA上昇,血漿鉛30μg/L以上で赤血球数減少,ヘモグロビン低下,血漿鉛40μg/g以上になると平均赤血球ヘモグロビン濃度MCHC低下,血漿γGTP上昇が見られた。以上の結果から,鉛による生態影響の検出には,血漿鉛30μg/Lでモニタリングするのが適当と考えられた。 2 疫学的研究:鉛精錬作業者の血液・尿試料について血漿鉛と生体影響の関連を検討した。血漿鉛8μg/L以上で赤血球ALADの著明な低下、血漿ならびに尿δ-ALA上昇,血漿カルシウムの著名な低下,血漿鉛20μg/L以上でヘモグロビン低下が見られた。一方,全血鉛20μg/dL以上で赤血球ALADの著明低下,血漿ならびに尿δ-ALAの著明上昇,血漿カルシウムの著明低下がみられたが,血色素量,ヘマトクリットは全血鉛が80μg/dL以上になっても変化が見られなかった。以上の結果から,鉛の造血系への作用を考えると全血鉛よりも血漿鉛の方がより敏感な指標と考えられた。 しかし,血漿鉛は測定感度を如何に上昇させて測定するるかが大きな問題で,現時点では,MIBKで抽出したのちMIP-MSで測定するのが最も現実的な方法を考えている。
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