研究概要 |
職業性ストレスと自律神経機能との関連について検討し,以下の成果を得た. 1.職場の心理・社会的ストレスレベルと自律神経機能との関連 1991年と1994年の両年度に一事業所(製造業)にて行なった職場の心理・社会的ストレスに関する測定結果(Job Content Questionnaire日本語版による)にもとづき,対象者をHigh-strain群とそれ以外に区分し,心電図R-R間隔complex demodulation法により交感および副交感神経活動レベルを比較した所,両群には有意な差が認められなかった.しかし,これらの自律神経活動レベルが血圧レベルそのものと関連していることを見い出した.すなわち,境界域高血圧群の交感神経レベルは正常血圧群に比して高値を,また副交感神経レベルは低値を終日維持する傾向が認められた.これらの結果から,今後は,職場ストレスと個人の血圧値との相互作用に配慮した研究デザインによる解明の必要性が強く示唆された. 2.喫煙および身体活動の自律神経活動への影響について 喫煙の自律神経活動への影響について,独自に開発したシガレットライターを使用し,喫煙の正確な時刻を同定して,喫煙開始後15分までの自律神経活動レベルの推移を観察した.その際,ほぼ24時間にわたって営業活動をしているタクシードライバーを対象として測定し,身体活動量計により,覚醒時のデータ(食事中を除く)を取り出した.その結果,喫煙の自律神経への影響には,喫煙の時刻により差があり,8-13時までの時間帯では交感・副交感ともに大きな変動を示さないのに対し,23-01の時間帯で喫煙により交感神経レベルが上昇し,もとへ戻りにくい傾向,20時以降で副交感神経機能が0-5分まで抑制される傾向などが明かとなった.深夜に及ぶ長時間労働と喫煙との相互作用についてさらに詳細な検討の必要性が示唆された.
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